【連載コラム:第2回】昇進・異動・組織改革がもたらすメンタル不調と、プレイングマネージャーの負担(6回シリーズ)

カテゴリー:メンタルヘルス対策 / 健康経営 / 組織開発
読了時間の目安:約5分

「昇進したばかりの管理職が、以前より元気がなくなった」
「組織変更後、チームの雰囲気や成果に停滞感が出ている」
このような変化を感じたことはないでしょうか。経営者や総務人事担当者の方にとって、こうした状況は決して珍しいものではありません。

一見すると個々の問題に見えるこれらの現象ですが、その多くは、「昇進・異動・組織改革」といった変化に伴う見えない負荷と深く関係しています。

本稿では、第1回で触れた「移行期(トランジション)」の考え方を踏まえながら、特に中小企業においてなぜ昇進や異動のタイミングでメンタル不調が生じやすいのか、その構造を整理します。

目次

1. 昇進・異動で不調が起きる理由

本来、昇進や配置転換は評価や期待の表れであり、前向きな出来事として捉えられるものです。しかし実際には、そのタイミングで体調を崩したり、パフォーマンスが落ちたりするケースが一定数見られます。

この背景にあるのが、「役割の変化に伴う見えにくい負荷」です。

中小企業においてはこの傾向がより顕著に現れます。特にプレイングマネージャーとなった場合、従来の業務を担い続けながら、部下のマネジメントや意思決定、対外的な調整など、新たな役割が同時に求められます。

一方で、人員に余裕がある大企業とは異なり、業務そのものが軽減されることはほとんどありません。その結果、業務とマネジメントの両方を担う状態が常態化し、知らず知らずのうちに負荷が積み重なっていきます。

また、昇進や異動に加えて、組織改革も同様に大きな負荷を生みやすい変化の一つです。

組織体制の見直しや業務プロセスの変更が行われる際には、これまで当たり前だった仕事の進め方や役割分担が大きく変わることになります。特に中小企業においては、明確な移行期間が設けられないまま変化が求められることも多く、現場は対応に追われがちです。

こうした状況では、「何が正解なのか分からない」「以前のやり方が通用しない」といった不確実性が高まり、心理的な負荷が増していきます。昇進や異動と同様に、組織改革もまた、見えにくいストレスを生み出す移行期の一つといえるでしょう。

2. 優秀な社員ほど抱え込みやすい構造

さらに注意が必要なのは、この負荷が「優秀な社員」に集中しやすいという点です。

プレイヤーとして高い成果を上げてきた社員ほど、責任感が強く、周囲に頼る前に自分で何とかしようとする傾向があります。また、周囲からの期待も大きいため、「弱音を吐いてはいけない」という意識が働きやすくなります。

その結果、表面上は問題なく業務をこなしているように見えても、内側では負荷を抱え込み続け、限界に達して初めて不調が表面化するというケースが生じます。

一見すると「順調にやれている」ように見えるため、周囲も気づきにくく、対応が後手に回りやすい点も特徴です。

3. なぜ企業は気づきにくいのか

また、この変化は周囲から見えにくいという側面もあります。

経営者や部長クラスは、それぞれの業務に追われる中で、現場の変化に気づきにくい状況にあります。仮に気づいたとしても、日々の忙しさの中で十分に手を差し伸べる余裕がないというケースも少なくありません。

その結果、「管理職になった以上、自分で乗り越えるべき」という前提が、暗黙のうちに置かれやすくなります。

4. “以前はできた”が通用しない理由

しかし現在の管理職を取り巻く環境は、以前とは大きく変化しています。

現在の管理職は、以前にないほど多重な役割を担っています。人手不足の中でプレイヤーとしての業務を抱えながら、マネジメント、意思決定、対外対応にも関与しなければなりません。

それに加えて、コンプライアンスやリスクマネジメント、ダイバーシティといった新たな要請にも応えつつ、成果を求められます。さらに、部下のメンタルヘルスやキャリアにも気を配らなければならないのが、今の管理職です。

こうした状況の中では、「自分が管理職になったときはこうだった」という過去の前提だけでは、現状を十分に捉えることは難しくなっています。この認識のズレが、支援の遅れや見落としにつながる一因とも言えるでしょう。

メンタルヘルス対策の重要性については、厚生労働省の指針でも示されています。
▶ 職場におけるメンタルヘルス対策(厚生労働省)

5. 変化は“重なって”負荷になる

加えて、役割だけでなく、人間関係や立場も変化します。これまで同僚だったメンバーとの距離感が変わり、上司との関係性も新たに築き直す必要があります。

こうした変化が同時に重なることで、心理的な負荷は確実に高まっていきます。それでも本人は「期待に応えなければならない」と無理を続けてしまい、不調が顕在化した時にはすでに一定の負荷が蓄積されているケースも少なくありません。

次回予告

本連載では、全6回にわたり、この「移行期のストレス」と「レジリエンスの育み方」について解説していきます。

次回(第3回)は、「育児や介護の始まりと、仕事との両立に潜むストレス」に焦点を当て、ライフステージの変化がメンタルに与える影響と、その対応の考え方について整理します。

中小企業の経営者様・人事担当者様へ

WERESコンサルティングでは、中小企業に特化したEAP(従業員支援プログラム)の導入や、レジリエンスを高める各種研修をご提案しています。
(※横浜・神奈川エリアを中心に、地域密着型・現場重視のオーダーメイド支援を強みとしています)
まずは現在の社内のお悩みについて、「無料相談」からお気軽にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次